Amster Rothstein and Ebenstein, LLP - Intellectual Property Law

いよいよ電子ディスカバリ規則が公式に始動(1) (only available in Japanese)

- マイケル V. ソロミタ
Author(s): アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

米国における知財訴訟実務の最前線 vol.1

いよいよ電子ディスカバリ規則が公式に始動(1)

マイケル V. ソロミタ
アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

「IPNEXT」をご覧の皆様にアメリカからご挨拶申し上げます。このシリーズは、米国特許法に関するさまざまな情報を皆 様にお届けするものであり、日本企業の知財ご担当者様など、知財プロフェッショナルの方々に少しでもお役に立てば幸い です。内容につき、ご質問やご意見等がございましたら、どうぞIPNEXT編集部までお知らせ下さい。また、このシリーズで「 このような内容を取り上げてほしい」というご要望がありましたら、ぜひお聞かせ下さい。では、早速第1回目のトピックに入 っていきましょう。

もし、あなたが米国特許法の改定を普段からチェックしておられるなら、きっと連邦民事訴訟規則(U.S. Federal Rules of Civil Procedure)の電子ディスカバリに関する最近の改定について、すでに多くのことを聞かれたに違いありません。私自 身、2006年12月1日に始まったこの改定について、「特許侵害訴訟における証拠開示手続(ディスカバリ)対応を劇的に変 えることになる」といった多くの記事を目にしました。この騒ぎもあり、今回の改定がわれわれ弁護士の実務や、クライアン トによる訴訟対応に及ぼす影響は今後精査されることでしょう。

実際のところ、多くの場合、この改定は単にこれまで行っていたことを法律として定義したにすぎないのです。例えばこの 改定では、証拠開示手続でいう「書類」の定義を「電子的に保存された情報も含むもの」と明確にし、訴訟開始後の早い段 階で代理人たる弁護士同士が電子文書の取り扱い・提出法を討議、決定することを要求しています。しかし改定前から、電 子文書は証拠開示の対象でしたし、相手方弁護士からその提出を求められることも多々あったので、われわれに言わせれ ばこの改定は、すでに行っていた内容にすぎません。また、改定は秘匿特権の対象である電子情報(注1)がうっかり開示 されてしまった場合の問題や、開示すべき電子情報の合理的な基準、電子情報が提出されなかった場合に科される制裁 の考え方など、さまざまなガイダンスを示しています。こうした改定の多くに対応するのは代理人である弁護士ですから、改 定の解釈に企業の知財担当者などクライアントの皆様が懸念されることはないでしょう。

ただし、電子ディスカバリ対応には、実際にクライアントの皆様にご理解いただかなくてはならない重要な点が2つあるの です。1つは、こうした改定に対応するには、まず弁護士が自分のクライアントの電子情報について十分な知識を得る必要 があるため、訴訟開始後、早い段階で自分の弁護士にどのような電子情報がどのような形で保存されているかを詳細に伝 え、理解させることが非常に重要です。例えば、自社のIT担当者と弁護士が円滑なコミュニケーションを行えるようにする 必要があります。それは、知財担当者が、弁護士とIT担当者による、保存されている電子情報の詳細を討議するための電 話会議を早急に設定する、または、知財担当者がIT担当者と討議の上、その内容を弁護士に伝える、ということでもかまい ません。

2つ目は、クライアントが訴訟開始前、そして特に訴訟開始後、電子データを適切に保存することが重要だという点です。 そして、そのデータ保存や管理が、クライアントの業界の常識から外れていないかを正しく理解するための、IT担当者と弁 護士を含めた討議も必要となるでしょう(注2)。なお、改定では「具体的にどのように電子ディスカバリを進めるか」につい て原告・被告の両当事者に裁量を与えています(ただし、最終的に裁判所にとって受容できる内容であることが条件です) 。ですから、この電子ディスカバリ規則の影響はケース・バイ・ケースであり、極端に影響が出るケースもあるかもしれませ ん。とにかく、電子情報の有無・所在や具体的なデータベース仕様などを早期に自分の弁護士に伝え、理解させることが、 訴訟において電子情報の取り扱いを正しく、計画をもって進めるための重要な鍵であり、ひいてはこれが訴訟を成功裏に 終わらせることにつながるのです。

「連邦規則の変更」について

ご存知のように、米国では広範な「ディスカバリ」に関する連邦規則が定められており、書面による質問(「質問状」 (interrogatories))への回答や証人による証言の提供(「証言録取」(deposition))などと併せて、訴訟の両当事者が争 点に関連し、かつ秘匿特権の対象ではない文書を相手方へ提出するよう定めています。今回の改定全体を俯瞰すると、改 定の焦点が、従来の書面情報取り扱いと同様の基礎的なルールを電子情報の取り扱いにも適用することにあると分かり ます。改定では「ESI(Electronically Stored Information:電子保存情報)」という言葉を用い、「書類」とは紙ベースの書 類だけではなく、電子情報も含むことを明確にしています。ESIは、コンピュータやディスク、フラッシュ・ドライブ、テープ、イ ンターネット上に保存されたものだけではなく、携帯電話上のメールのやりとりなど個人の通信機器に保存されたものを含 め、訴訟に関連すると思われる一切の電子データを指します。こうした電子データは電子保存された文書そのものだけで はなく、一般的にメタデータと呼ばれる、文書の作成者、保存場所、ファイルサイズ、ファイル名、出所、文書履歴(変更履 歴、コメントなど)といった電子ファイルに付随する情報も含みます。

電子ディスカバリに関する連邦規則の改定はたくさんありますが、クライアントの皆様にご注意いただきたい点は、次にご 紹介させていただきます。

 

注1:秘匿特権対象の情報とは、一般的に、弁護士に法的アドバイスを求めるための、また、依頼人に法的アドバイスを与えるための弁護士・ 依頼人間の通信内容や、弁護士のワークプロダクト(例:弁護士の書いたメモや書類)といった情報を指す。

注2: クライアントのニーズやその事業規模により電子データベースの管理や運用方法は異なるが、通常順守が期待される基本的かつ合理的 なプロトコルが存在する。




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