Amster Rothstein and Ebenstein, LLP - Intellectual Property Law

いよいよ電子ディスカバリ規則が公式に始動(2) (only available in Japanese)

- マイケル V. ソロミタ
Author(s): アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

米国における知財訴訟実務の最前線 vol.1

いよいよ電子ディスカバリ規則が公式に始動(2)

マイケル V. ソロミタ

アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

今回からは電子ディスカバリに関する連邦規則の改定について、注意点を2回に分けて説明します。

「会って話を」(Meet and Confer)

改定規則は、訴訟の早い段階に両当事者の弁護士が、以下の点について討議するために「会って話をする」よう義務付 けています。

・ディスカバリ対象となる情報の保存・削除防止について

・ESI(Electronically Stored Information:電子保存情報)の開示およびその提出方法について

ま ず最初の点ですが、訴訟が開始されると訴訟当事者は自社のシステムから訴訟に関連する情報や文書がそれ以上削 除されないよう、「訴訟対応削除停止措置(litigation hold)」を取らなくてはなりません。改定規則も通常のデータベース管 理の一環として行われる情報の削除を予期していないわけではありません(場合によってはそうした削除が許される場合も あります)が、訴訟開始後は訴訟に関連する情報が削除されないよう注意が必要です(後述)。そのためにはもちろん、関 係する情報、通常のデータベース管理方法および保存年限ポリシーを自分の弁護士に理解させ、適切な対応を共に導き 出すための討議・調整が必要となります。

2つ目の点についても、電子文書の有無、その形式、保存場所、電子データベースの管理プ ロセスなどを、クライアント が自分の弁護士に十分に教えることが必要です。これにより、弁護士は関連する電子文書に精通していることを相手方弁 護士や裁判所に対して示すことができ、さらに重要なことに、クライアントの証拠開示対応の負担をいかに最小限に抑える か、という戦略を構築することができるのです。これは訴訟全体をうまく、有利に進める上で重要なポイントとなります。

訴訟開始後 の早い段階で弁護士に情報を伝えて理解させ、戦略的に計画を構築することは、その後の証拠開示対応・プ ロセスに大変な影響を及ぼします。両当事者の弁護士が、電子文書に関して非常に簡略な限定的開示のみで合意する場 合があるかもしれませんし、また、非常に詳細かつ手間のかかる電子文書開示の要求を受けることになる場合もあるので す。

電子 メールの提出は、大変な時間とコストがかかる分野の一例です。電子メールがこれほど普及した今日、非常に多くの 情報が電子メールでやりとりされるため、メール本体に加え、それに付随するメタデータの量も膨大です。これらの情報を 集め、訴訟に関連するか、秘匿特権の対象になるかを弁護士が精査し、該当するものを相手方に提出する、というのは気 の遠くなるような作業です。しかしながら、もちろん案件にもよりますが、戦略的に証拠開示計画を構築することで両当事者 の弁護士が「電子メールの開示は不要」、あるいは「非常に限定したトピックに関する電子メールのみ開示対象とする」と合 意することも可能なのです。その場合、コストや対応時間を大幅に削減することができます。

同様に、電子文書の提出形式も大きく影 響します。例えば両当事者は、ワードやエクセルなど文書が保存されたそのまま の形式で提出する代わりに、TIFFイメージ(検索機能可、あるいは不可の形)で比較的シンプルに文書開示を進めるよう合 意するかもしれません。また、付随するメタデータの精査・提出は非常に厄介なもので、弁護士同士で最初に討議しなくて はならないのですが、これについても、メタデータの提出は不要、と合意するかもしれません。興味深いこととして、現在、 裁判所は、提出しないことに対して正当な事由が無いメタデータの提出義務について、意見が分かれていることを申し添え ておきましょう。

ま とめると、訴訟開始後は「関連する電子文書を削除しないよう注意し、かつ、電子保存されている情報の有無や所在と いった詳細を、弁護士とすぐ討議する」ことが重要です。クライアントと弁護士間で適切な証拠開示計画を構築することが、 訴訟対応労力・費用をかなり削減すると同時に、訴訟を成功裏に収めることにつながるのです。

初期開示

連 邦規則は訴訟開始後の早い段階で、相手方からの要求を待たずに関連情報を所有する人名や関連する文書の場所、 内容等を「初期開示」として相手方に提供することを義務付けています。今回の改定により、訴訟において使用する予定 のESIのコピーもしくは内容の詳細を、カテゴリーや保存場所別に初期開示の一部として提供することが義務付けられまし た。つまりここでも、訴訟の早い段階でクライアントが関連する電子情報の詳細について自分の弁護士と討議しておく必要 があるのです。

証拠開示 要求に対する制限

今回の改定では、電子ディスカバリ要求の濫用を防ぐ手段も講じています。改定は以下のように述べています。

・あるESIにつき、費用その他の負荷を考えれば合理的にアクセスできるESIではない、と判断した場合、当事者はそうした ESIを提出せずともよい。

提 出要求を受けた当事者が、要求されたESIの複雑性や量などから対応費用やその他の負荷が合理的ではないと立証 すれば、そうしたESIの提出は免除されます。改定以前は、アクセスが難しいESIの提出要求に対して単に異議を申し立て たり、提出しない、といった対応でしたが、改定後は、要求を受けた当事者が、要求されたものの、アクセス費用その他の 負荷が合理的ではないため探さなかった、あるいは提供しなかった情報のソースを同定しなくてはならなくなりました。

なお、要求した当事者が正当な事由を述べ、かつ裁判所がそれを認めた場合、そうした負荷があるにもかかわらず、裁 判所が提出を命令する場合があります。そのような命令を出すか出さないかの裁判所判断は、以下の要素に照らして行わ れます。

(1)要求された情報は他の情報で代用できるものか、または少ない負荷や費用で、より簡便な情報源から得ることができる ものか

(2)要求している当事者はそうした情報を得る十分な機会をすでに与えられていたか

(3) 提出にかかる費用その他の負荷と比較した場合、それら負荷よりも大きい利益が要求された情報から得られるか

つ まり、電子ディスカバリ要求の範囲はケース・バイ・ケースの事実に照らして勘案され、最終的には裁判所が合理性に 従って判断を行うのです。このため、どのディスカバリ要求が合理的であり、どれが不合理な負荷や費用を伴うものである かを把握しておく必要があります。このことも、訴訟の早い段階でクライアントと弁護士が、電子文書の有無・所在について 慎重に打ち合わせを行うことの重要性をさらに高めていると言えるでしょう。




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