Amster Rothstein and Ebenstein, LLP - Intellectual Property Law

証拠法上の秘匿特権 ~プリビレッジを正しく理解する(2) (only available in Japanese)

- マイケル V. ソロミタ
Author(s): アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

米国における知財訴訟実務の最前線 vol.3

証拠法上の秘匿特権
~プリビレッジを正しく理解する(2)

マイケル V. ソロミタ
アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

前回 に引き続き、証拠法上の秘匿特権について述べます。

共通の利益を根拠とした秘匿特権

第三者への開示があってもプリビレッジを維持できる、という例外が「共通の利益を根拠とする」原則、あるいは「ジョイン ト・ディフェンス」と呼ばれる原則です。これは共通の法的利益を守るために複数の当事者がそれぞれの弁護士を通してや りとりをする場合、そうしたやりとりがすべて自分と自分の弁護士との間で行われたかのごとくプリビレッジで保護される、と いうものです。この保護を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。

①やりとりが「共通の法的利益」に関するものであること

②当該「法的利益」を追求するためのやりとりであること

③この特権の適用が放棄されていないこと

通常、同じ課題(例; 同一特許の侵害催告)を抱え、共通の相手に対峙(たいじ)している当事者間では「共通の法的利 益がある」と言えます。これは必ずしも、訴訟において「共同被告」の立場にまで発展している必要はありません(注8)。こ の原則は複数の当事者が共通の利益を目指して、より効果的に法的サポートを得ようと協働する場合に適用されます(注 9)。例えば、米国では特許の所有者(原告)が、1つの訴訟の中で複数の企業を被告として訴えることがよくあります。こう した共同被告は明らかに共通の法的利益を持ち、したがって共同ディフェンス戦略を練ったりする場合に行うやりとりが、 プリビレッジの対象として保護され得ます。また、ある複数の企業が共同開発を行い、その成果物の特許を共有している場 合も共通の法的利益があると言えます。

ジョイント・ディフェンスによるプリビレッジの対象となるために、複数当事者間で「ジョイント・ディフェンスのための契約」 を書面で締結することは必ずしも必要ありません。実際には契約書があるからといってジョイント・ディフェンスが確立して いるとは言えないからです。ただし、複数当事者間でどのように弁護士費用を分担するか、先行技術情報の使用をどこま で許可するか、といった内容について合意を得ておくために、「ジョイント・ディフェンスのための契約」を締結する場合がし ばしばあります。

 ãªãŠã€ã‚¸ãƒ§ã‚¤ãƒ³ãƒˆãƒ»ãƒ‡ã‚£ãƒ•ã‚§ãƒ³ã‚¹ã«ãŠã„て重要なことは、「複数当事者間でのやりとりの際に必ず弁護士が同席していなくて はならない」ということです。ある日本企業(2社)の技術者が、ある特許の非侵害について日本で討議をするとしましょう。 この場合、いずれかの企業の弁護士が法的アドバイスを与えるために同席していなければ、この討議はジョイント・ディフェ ンスの原則から外れ、プリビレッジの対象とはなりません。ただし、この討議を通じて文書が作成され、法的アドバイスを得 るためにその文書が弁護士に送付された場合、この文書自体は先に述べたようにプリビレッジの対象として保護されます。

このジョイント・ディフェンスによるプリビレッジも、共通の法的利益を持たない第三者に内容が開示されると、その内容に ついてはプリビレッジが放棄されたとみなされます。

「ワークプロダクト」の原則

「ワークプロダクト」の原則は、弁護士により、あるいは弁護士が訴訟または公判で使用するために作成された書類やそ の他の有形物を、プリビレッジの対象として保護するものです(注10)。連邦巡回控訴裁判所が有形物に限らず、無形物も ワークプロダクトとして証拠開示手続きにおける相手方への開示を免れ得るという判断を行ったのは最近のことで(注11)、 ここでいう無形物には弁護士の思考や精神的プロセス、戦略、意見などが含まれます。

実際に訴訟にまで発展しなくとも、その書類が作成された段階で訴訟となる可能性が実質的にあるなら、その書類はワー クプロダクトとして保護されます(注12)。ただし、漠然と将来の訴訟を危惧しているような状況下で作成された書類はワー クプロダクトにはなりません。具体的な訴訟の可能性が要件なのです(注13)。同様に、将来の訴訟で使用されたとしても、 作成された段階では通常の業務範囲内で作成された書類は、訴訟や公判に備えて作成したものではありませんからワー クプロダクトの保護の対象外となります。

このワークプロダクトの保護も、第三者へ開示したり、訴訟において故意侵害主張に反論するために使用したりすること で放棄した、とみなされます(注14)。例えば、訴訟に使用するかもしれないと考えて従業員が作成した書類を、訴訟に発 展するかもしれない相手方との交渉の中で相手方に開示したとします。すると、この書類はもはやワークプロダクトとして保 護されません。そもそもこの書類が訴訟での使用を考えずに作成されたものであったなら、相手方に開示せずとも、ワーク プロダクトの保護の対象にはなり得ません。

続<


注10: Fed. R. Civ. P. 26(b)(3)

注11: In re Seagate, 2007 U.S. App. Lexis 19768, ___

注12: See, e.g., Williams v. Sprint/United Mgmt. Co., No. 03-2200, 2006 U.S. Dist. LEXIS 4219, at *73 (D. Kan. Feb. 1, 2006)

注13: See Williams, 2006 U.S. Dist. LEXIS 4219, at *74

注14: In re Seagate, 2007 U.S. App. Lexis 19768, ___




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