Amster Rothstein and Ebenstein, LLP - Intellectual Property Law

米国特許侵害訴訟の全プロセス (前編) (only available in Japanese)

- マイケル V. ソロミタ
Author(s): アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

米国における知財訴訟実務の最前線 vol.5

米国特許侵害訴訟の全プロセス (前編)

マイケル V. ソロミタ
アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

これまで、色々な米国の知的財産権に関する判例や訴訟ルールを見てきましたが、このシリーズの最後として、改めて米 国特許訴訟の全体の流れをまとめておきたいと思います。特許侵害訴訟は州裁判所ではなく、連邦裁判所の管轄事項で す。

典型的な訴訟の流れは1.訴訟前、2.訴状の提出、3.証拠開示手続き(ディスカバリ)、4.公判、5.公判後、の5つに分ける ことができます。とは言っても、各裁判所や担当判事によってクセがありますから、厳密に訴訟を一般化して語ることはでき ません。ここではあえて、できるだけ一般的に訴訟の流れをお話したいと思いますが、個別にご質問等がございましたらぜ ひIPNEXT編集部までお知らせ下さい。

1.訴訟前

通常、訴訟開始前に特許保有者である原告は、保有する特許の請求項の少なくとも1つがある製品・サービスなどにより 侵害されているかを分析した上で訴訟を起こすものであり、ある日突然、訴訟を開始するというものではありません。米国 法では、特許保有者は訴状を提出する前に、請求項の少なくとも1つが侵害されていると信じるに足る事象があった、と言 えなくてはいけません。ただし、ここで行われる分析のレベルはさまざまです。対象製品のカタログと請求項を照らし合わせ るような単純なものから、内部あるいは外部の技術機関や専門家を使ってリバースエンジニアリングをするものまで、幅広 く考えられます。

最終的に、請求項が使用されているか否か、訴訟を開始するか否かの判断には代理人や専門家だけではなく、当事者で ある特許保有者も深くかかわるべきです。特許保有者自身が「訴訟を開始するに足るベースがあった」と言えるよう、リバ ースエンジニアリングに参加したり、対象製品の資料を集めたりすることが望ましいでしょう。特許保有者が「請求項の少な くとも1つが使用されている」と信じるに至った場合、ネクストステップを決定しますが、これには、まず訴訟外で相手方にコ ンタクトし、交渉して訴訟外での和解を目指すか、あるいは訴状を提出してすぐ訴訟を開始するか、の選択肢があります。

さて、訴えられる可能性のある側から少しみてみると、ある特許について、自社では非侵害と判断しているが提訴される 可能性があるかもしれない、といった危惧がある場合、やはりリバースエンジニアリングや製品と請求項を照らし合わせる などの分析をし、万一に備えた防御策を講じておく必要があるでしょう。当該特許の無効化を目指して先行技術調査をして おくことも重要です。

 è¨´è¨Ÿå‰ã®æ´»å‹•ã‚„期間は本当にケース・バイ・ケースです。数年にわたって費用をかけてリバースエンジニアリングを行っ たり、交渉を続けたり、ということもあれば簡単な分析の結果、すぐ訴訟に入るケースもあります。また、訴訟を起こすこと ができるのは特許保有者だけではなく、以前にも解説したように特許保有者ではない側から、対象特許の無効確認訴訟を 提訴することもできます。

2.訴状の提出

特許保有者が侵害訴訟を開始する、と決めた場合、いずれの裁判所に訴えるか、を決定しなくてはなりません。冒頭申し 上げたように、特許侵害訴訟は連邦裁判所の担当です。ですから連邦地方裁判所に提訴するわけですが、被告が対象製 品を販売していたり、オフィスを持つ場に存在する連邦地方裁判所に提訴する必要があります。そうした管轄要件を満たす 連邦地方裁判所が複数存在する場合、どの裁判所が戦略的に良いのかを特許保有者と代理人である弁護士とで相談し、 決定することになります。

例えば、数多くの特許侵害裁判を扱っている裁判所がいいのか、あるいは裁判スピードが速いことで知られる裁判所が いいのか、さまざまな特徴を勘案し、自分の裁判にはどのような裁判所に提訴するのが有利なのかを判断します。これは 弁護士任せにせず、当事者である特許保有者も積極的に意思決定に参画すべきです。なお、実際に裁判に大きな影響を 与えるものとして、担当判事が誰か、という要素がありますが、裁判所を選ぶことはできても、その裁判所のいずれの判事 が担当するかは選ぶことはできません。

いずれの裁判所に提訴するかを決定すると、次に訴状を作成し、裁判所に提出します。訴状には少なくとも、侵害者、侵 害されている特許の請求項、侵害している製品やサービスなどが記載される必要があります。通常、訴状には、提訴に最 低限要求されている内容のみを記載することが多いようです。

作成された訴状は侵害者である被告に送達されなくてはなりません。被告が米国在住であればこれは比較的シンプルで すが、被告が米国企業以外の場合、送達には手間がかかりますのでここでは省略します。外国企業への送達例を挙げて おくと、例えばハーグ条約にもとづいて日本企業に送達を行うといった形になります。送達が終了すると、被告は通常20日 以内に訴状に対する返答をするか、もしくは訴状を取り下げるようアクションを取らなくてはなりません。

被告が訴状に対する返答を提出した場合、裁判所が両当事者のインプットを得ながら証拠開示手続きや公判のスケジュ ールを設定します。 ここでは今回の連載の第1回目で紹介した電子ディスカバリのスケジュールも設定しますから、よく弁 護士と話し合ってどのような文書があるのかなども勘案した上で、よいスケジュールを設定できるよう努めることが重要で す。また、この初期の段階で原告、被告のそれぞれが弁護士とよく話し合って証拠開示手続きでどのような証拠を要求す るか、それぞれ独自にどのような調査を実施するかなど、訴訟戦略を立てることが非常に重要です。




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