Amster Rothstein and Ebenstein, LLP - Intellectual Property Law

米国特許侵害訴訟の全プロセス (後編) (only available in Japanese)

- マイケル V. ソロミタ
Author(s): アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

米国における知財訴訟実務の最前線 vol.5 \

米国特許侵害訴訟の全プロセス (後編)

マイケル V. ソロミタ
アムスター, ロススタイン&エーベンスタイン法律事務所 パートナー、米国特許弁護士

3.証拠開示手続

いよいよ証拠開示手続「ディスカバリ」(Discovery)に入ります。証拠開示手続きの期間はケース・バイ・ケースで4ヶ月で 終了するものから、数年にわたるものもあります。また、証拠開示手続きは大きく、事実に関する証拠開示「ファクト・ディス カバリ」(Fact Discovery)とエキスパート(専門家)による証拠開示「エキスパート・ディスカバリ」(Expert Discovery)の2つ に分かれます。ファクト・ディスカバリは侵害を主張されている製品などの事実に関するディスカバリ、エキスパート・ディス カバリは専門家の意見に依拠するディスカバリです。

証拠はさまざまな方法で集められますが、1つは相手方に文書の提出を求める方法「ドキュメント・リクエスト」(Document Request)です。また、相手方の口頭による証言を求める方法「デポジション」(Deposition)もよく利用されます。書面で質問 を送り、回答を得る「インタラガトリ」(Interrogatories)という方法もあります。ドキュメント・リクエストを受領した当事者は弁 護士と相談し、要求された文書を同定、提出すべく、合理的努力を行うことが要求されます。これはケースにもよりますが 非常に骨の折れる作業です。ドキュメント・リクエストを効率よく進めるためには、弁護士と良く相談をし、電子文書を含むど のような文書をいつまでに集めて提出しなくてはいけないのかを明確に理解して対応することが重要です。また、デポジシ ョンでは、証人が宣誓をした後、相手方弁護士が質問をし、それに回答する形になります。証人側の弁護士もデポジション には出席するのが通常ですし、また、デポジション前に証人と準備を行うのも証人側弁護士の重要な仕事です。ここでもや はり、弁護士とどのような質問が予測されるかなど、しっかり準備することが大切です。

ディスカバリ中、相手方が要求した書類や情報を適切に提出していないと判断した場合は、裁判所に提出を強制するよう 申し立てることもあります。また、ディスカバリ中に、事実に関する言い争いはなく、法律上の問題のみが残っていると判断 した場合は、その法律問題について裁判所の意思決定を求める略式判決の申し立てを行うこともあります。この略式判決 によってすべてカタがついてしまう場合もあります。例えば侵害を主張されている被告が対象製品のある機能や仕組みを 事実として認める場合、その事実に基づいて、裁判所が侵害・非侵害の判断を略式判決として下すような場合です。

ディスカバリ中は「マークマン・ヒアリング」(Markman Hearing)を含むいくつかのヒアリングを裁判所が実施することも多 々あります。中でもマークマン・ヒアリングは特許請求項の解釈を行うためのもので、これは両当事者が色々な書類を提出 する複雑なプロセスになります。ただし、請求項の解釈は特許侵害訴訟においては非常に重要ですから、このマークマン・ ヒアリングで大部分決着がついてしまうこともあります。

4.公判

ディスカバリが終了すると、公判の準備です。ここではそれぞれの弁護士がある証拠を除外するよう申し立てたり、略式 判決を申し立てたりとさまざまな申し立てを行います。そして実際に公判で提出する証拠や、証人の準備を行います。

また、公判は判事のみの前で行われる「ベンチ・トライアル」(Bench Trial)と、陪審の前で行われるものの2種類がありま す。これはいずれかの当事者が陪審裁判を請求すれば、自動的に陪審による裁判となります。いずれの当事者も陪審裁 判を請求せず、判事による判決を求めるのであればベンチ・トライアルになります。

特許侵害裁判ではいずれかの当事者 が陪審裁判を請求することが非常に多いと言えます。陪審裁判は裁判地に住居を有する、最低6人の陪審によって決定さ れます。公判は数日で終わることもあれば何週間も続くことがあります。 陪審裁判の場合は陪審員が、ベンチ・トライアルの場合は判事が、最終的にある特許請求項が侵害されているか、そし てその請求項は有効か、などを判断します。侵害されており、有効であると判断された場合、続いて損害賠償額を判断しま す。

米国特許侵害訴訟が提訴され、公判で決定が下されるまでの期間はケースごと、裁判所ごとに異なります。あえて平均的 な期間をあげるなら3年程度と言えるかもしれません。

5.公判後

陪審裁判によって自分に不利な決定が下された当事者の多くは、判事が陪審の決定を覆すよう申し立てを行います。ベ ンチ・トライアルの場合は、判事に再考を求める申し立てが行われます。これらの申し立ては通常、判決の直後に行われま す。

もし、こうした申し立てが失敗に終わった場合、敗訴した当事者は控訴することができます。特許侵害裁判の控訴裁判所 は連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)1つに集約されています。控訴の内容にもよりますが、CAFCに控訴されると、両当事者 が文書を提出したり、CAFCで口頭弁論を行ったりし、その結果、CAFCが決定を下します。このプロセスはおおよそ1年程 度です。

CAFCが下級裁判所の決定を覆し、新たな公判を命じる場合もあります。また、マークマン・ヒアリングにおける請求項解 釈を再考するよう下級裁判所の判事に命令する場合もあります。あるいは、下級裁判所の判決を正しいものとして支持す る場合もあります。その場合、敗訴した当事者は最高裁判所に上訴することができます。ただし、最高裁判所が上訴を受け 入れるケースは非常に少ないのです。ですから多くの控訴がCAFCで終了します。

最後に、米国特許侵害裁判は非常に複雑であり、手間もお金もかかるプロセスです。これをあえて簡単に説明しようと試 みましたがいかがでしたでしょうか。もし追加のご質問などございましたら、どうぞIPNEXT編集部までお知らせ下さい。 終わり




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